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最高裁判所第二小法廷 昭和22年(オ)23号 判決

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

本件上告理由は別紙記載のとおりであつて、これに対する判断は次のとおりである。

(一)上告理由第一点

(1)ある証人が当事者の一方と特に密接な関係にあるときはその証人の証言は常に真相に反するという実験則は存在しない。だから原判決が被上告人善蔵の義父である証人北吉造の証言を採用しても、その採証が実験則に反するとは言い得ない。

(2)証人北吉造の証言中論旨の指摘する部分を調書についてくわしく調べて見ると、それは必ずしも矛盾があるものということはできないばかりでなく、仮に矛盾があるものと解しても、原判決が認定して居るのは、要するに、昭和一三年五月九日頃小樽の磯野家住居において、磯野家の兄弟近親会合のさい、泰蔵が善蔵に対して本件土地建物を贈与したという事実であつて、上告人の指摘するいわゆる矛盾とは、その贈与契約が締結されるに至つたのは、泰蔵自身の発案によるのか或は亡父進の意思に基づく吉造の発案によるのかという点だけに関し、原判決が認定した前記事実そのものについては右証人の証言は何ら矛盾して居るものではない。したがつて、同証言を一の資料として原判決のような事実を認定しても、その認定は少しも実験則に反しない。(その他の判決理由は省略する。)

以上説明の理由により論旨はすべてその理由がないから、民事訴訟法第四〇一条、第九五条、第八九条により、主文のとおり判決する。

この判決は裁判官全員の一致した意見によるものである。

(裁判長裁判官 霜山精一 裁判官 塚崎直義 裁判官 栗山茂 裁判官 小谷勝重 裁判官 藤田八郎)

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